【獣医師監修】ワンコの膝蓋骨脱臼(通称:パテラ)、原因と対策

健康2022年7月7日by 長田萌先生

犬の筋骨格系の疾患でみられる事が多いとされているのが膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)です。ワンコにとって身近な病気の中のひとつと言うことができ、膝のお皿が脱臼してしまう疾患です。周囲のじん帯が上手に動かせなくなり、脚をつくことができなくなってしまうこともあります。この記事では、クロス動物医療センターの長田萌先生監修のもと、この疾患の概要やグレード別の症状、予防や対策について解説します。

“パテラ”と呼ばれることの多い膝蓋骨の「内方」脱臼

犬の膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは、その名の通り、膝の関節を構成する1つの要素である膝蓋骨(パテラ)が脱臼してしまう疾患です。トイプードルポメラニアンミニチュア・ダックスフンドなど日本で飼育頭数の多い小型犬では、膝蓋骨が内側に脱臼してしまう内方脱臼(ないほうだっきゅう)が多く認められます。この膝蓋骨内方脱臼を、通称「パテラ」と呼ぶこともあります。

脱臼を繰り返す事により徐々に脱臼がしやすくなったり、関節に炎症が起きたり、靱帯断裂の危険性が高まることもあります。

脱臼の違和感から、鳴き声を出したり、びっこを引く、足を地面につけづらそうにするなどするワンコもいれば、平気で走り回ったり、自分で足を振って膝蓋骨の位置を元に戻せるワンコもいます。成長期のワンコの場合は脱臼が骨の変形を招き、脱臼のしやすい足へと変化してしまうため、痛みなどの症状がなくとも治療が必要な場合もある、油断できない疾患です。

脱臼を防ぐための方法は外科手術のみですが、必要性は愛犬の年齢症状の有無や他の疾患の有無などによって変わります。 膝蓋骨脱臼が疑われる様子を愛犬が見せるようであれば早期に動物病院で適切な診断と治療を受けましょう。

膝蓋骨の脱臼のしやすさを分類した4グレード

膝蓋骨脱臼は、その脱臼の程度によって、重症度を4段階に分けて評価する事が一般的です。ポイントは、「脱臼のしやすさ」と「元の位置に戻すことができるか」の2点です。

<グレードⅠ>※一番軽症

外から力が加わると膝蓋骨が脱臼し、力がなくなると自然に正常の位置に戻ります。グレードのⅠのワンコは通常の運動での脱臼は稀です。

<グレードⅡ>

膝を屈曲すると膝蓋骨が脱臼し、外からの力か、膝を伸ばすことにより正常の位置に戻ります。外れたり戻ったりを常に繰り返している状態です。スキップ、ケンケンのような症状がみられることがあります。

<グレードⅢ>

膝蓋骨が脱臼している位置にあるため常に脱臼しています。外からの力で元の位置に納まりますが、すぐに外れた状態に戻ってしまいます。足をひきずったり、しゃがんだ姿勢で歩くなどの症状がでます。

<グレードⅣ>

膝蓋骨が脱臼している位置にあるため常に脱臼しており、外部からいくら力を加えても膝蓋骨は元の位置には戻りません。最小限しか地面に足をつけないような歩き方になったり、足を挙げたままの状態になったりします。

グレードがあがるほど手術の難易度があがり、合併症が起こるリスクも高まります。場合によりますが、 早ければグレードⅡでも手術を勧められるケースもあります。

膝蓋骨脱臼の原因

落下や打撲などの外傷が原因で後天的に発生する場合と、生まれ持った素因など先天的要因が原因で発生・進行する場合があります。

先天的要因が原因の場合、発生過程は複雑です。太ももの筋肉の位置のゆがみから始まり、骨の成長を通して、太ももやすねの骨のねじれ、変形などいくつかの事象が同時に起こり進行していきます。外れたり戻ったりを繰り返すことで軟骨がすり減り、さらに外れやすくなる場合もあります。

パテラが発症しやすいタイプの犬は?

膝蓋骨脱臼はすべての年齢・犬種で起こる疾患ですが、先天性の内方脱臼は小型犬に多く認められています。犬種別の調査では、ポメラニアントイ・プードルヨークシャー・テリアマルチーズチワワの順に多かったという報告もあります。性別や年齢による発生率の差は調査によって結論が異なり、まだよく分かっていません。前述のとおり、徐々に進行する可能性のある病気ですので、小さい頃から脱臼はしているけれども、症状が出たのは大人になってからというパターンも多くあるのだと推測されます。

パテラを防ぐための対策

膝蓋骨脱臼は先天的な原因で発生する場合が多いため予防が難しいですが、合併症である靱帯断裂は、急に方向転換するような動きや膝への強い衝撃によって起こります。フローリングなど、滑りやすい環境での激しい運動は控え、段差の上り下りが極力少なくて済むような生活環境を整えてあげてください。ワンコに走らないで!とはお願いできませんから、床に滑り止めとしてカーペットを引いたり、大きな段差にステップをつけてあげたりなどの対策が有効です。

自宅での脱臼チェックの方法として、膝を触って膝蓋骨が動く感覚がわかるというご家族もいらっしゃり、「膝がぽきぽき言う」といった表現をされる方も多いですが、脱臼を繰り返すことで軟骨の損傷や関節炎を起こす可能性がありますから、執拗なチェックはおすすめできません。

生活環境を整え、合併症のリスクをなるべく生活から取り除いてあげること、必要であれば手術を含め適切な治療を受けさせてあげることが最善の対策です。特に、成長期に脱臼を指摘されたワンコについては、定期的に病院を受診して進行具合を評価してもらいましょう。進行が早く重症度が高い場合ほど、早期に手を打つ必要があります。

ワンコは人より痛みに強い生き物です。膝蓋骨脱臼は、初期は痛みや違和感を訴えていても、徐々に慣れて普通に歩けるようになっていく事がありますが、脱臼が解消されたわけではないと言うことは、是非知っておいていただきたいポイントです。

膝蓋骨脱臼は治療方法も確立され、上手に付き合うことのできることが多い疾患です。獣医師と相談しながら、大切な愛犬にとって最適な疾患との付き合い方を選んでいただくと良いでしょう。

記事執筆&監修:
長田萌先生長田萌先生クロス動物医療センター足立勝どき勤務

麻布大学獣医学科卒業。2019年獣医師免許取得。 好きな匂いは焼き鳥の屋台と犬の肉球。趣味はホットヨガとビール。

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