【ドッグトレーナー監修】急所は鼻!犬の痛覚

健康2023年1月12日by 大谷幸代さん

もともと野生で暮らしていたワンコたち。自分はもちろん、仲間の命を危険から守るためにも、痛みや不調はまわりに気づかれないよう限界まで隠しがちな習性があります。この記事では、犬の痛覚や痛みの感じ方・表れ方について解説し、不調にいち早く気づくためのポイントを紹介します。

からだの部位によって異なる「痛み」レベル

急所は鼻!刺すような痛み

誰もが経験したことがある足の指先を家具にぶつけた時の痛み。思い出しただけでもつらい気分になる激痛は、体の端にある痛覚が他より敏感なためです。痛覚は痛みや衝撃、温度変化をいち早く感じとり私達を危険から守る役割を果たしています。

犬の痛覚は人間と同じで体の端(主に、足先/爪先・尾先・耳・鼻)にあります。痛みや温度変化を感じとり、危険を察知した場合はその対象から遠ざかることで、背中・首・太もも・腹部など、中心部へのダメージを回避します。

四つ足で移動する犬にとって身体の先頭に位置する鼻は、あらゆる危険を感知するセンサーの役割を果たしているため、痛覚が体の中で最も研ぎ澄まされています。犬の鼻は体の中で唯一、被毛や皮膚、骨で保護されておらずむき出しであるため、痛みや温度を感じた時の刺激は私たちの想像を絶します。


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鼻以外への衝撃は、ほとんどが鈍痛

犬の痛覚は、からだの端が研ぎ澄まされている一方で、他の部位は鈍感です。体全体で敏感に痛みを感じ取ってしまうと、軽微なケガや出血に耐えられず、移動したり、敵に反撃できなくなってしまうためです。

数百キロ離れた場所から傷だらけで自宅へ戻った迷子犬や、キャンプ場で野生動物から家族を守るために立ち向かった犬などが時折ニュースで紹介されますが、この構造について知識があるとその行動も理解できますね。

「痛み」を利用したしつけは効果なし

愛犬がイタズラをした時に、お尻を叩いてしまったことがある方もいるでしょう。人間の子供であればお尻を叩かれると痛みで泣いてしまいますが、犬の場合、お尻は大きな筋肉と厚い脂肪、太い骨で追われているため鋭い痛みを感じることはありません。あくまでも鈍痛、何かがぶつかったような鈍い衝撃として認識され、痛みもほぼないためしつけという意味では効果は期待できません。


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過去の日本のしつけでは、叱る時に強く鼻を叩いたり、床に鼻を押し付ける方法をとるものもありました。鼻を叩くことで犬が降参の姿勢をとったり、甲高い声で悲鳴をあげることから効果があると人間が誤解をしたことから広まった手法です。

体の中で最も痛みを感じる部位を叩かれるのですから、一時的に服従の姿勢は見せるものの、飼い主への不信感や恐怖は募る一方であり、ワンコとの関係構築においてはマイナスしかありません。犬のしつけには、言葉や手や指をつかったサイン、声などを活用する方が確実な効果が期待できます。

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限界まで我慢するワンコ達。普段からできるチェックポイント

「痛い」ときのこんな行動

野生環境下で生き抜くために、痛み・不調・加齢による体力の低下などを限界まで隠し通すワンコ達の習性は家族として暮らすペットになった今でもかわりません。

行動や表情、鳴き声などで痛みや不調が健著になるときには限界を超えているというサインです。特に足や腰の関節、口内や歯茎、内臓疾患などの慢性的な痛みは、症状が少しずつ悪化するため急激な変化が見られず、外見からも異変がわかりにくいことから早期に発見できないことが多々あります。

以下に挙げるような行動は、犬が体に何らかの痛みを抱えているサインです。

  • 手足が地面につかないよう、浮かせて歩く
  • 人間が触れようとすると逃げる、暴れる、噛みつく
  • 体に触れると甲高い声で鳴く
  • 散歩や運動を嫌がり、ハーネスや洋服の着用も拒否する
  • 食欲の減退、食事量の減少
  • 眠る時間が増えた

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シニア世代は手厚くチェックを

犬は6歳を超えるとシニア年代となります。一見するとこれまでと変わらず、元気いっぱいに見える場合でも、足腰や関節、内臓、感覚機能の低下は徐々に進んでいます。先ほど紹介した痛みが原因の行動がないかのチェックにプラスして、日ごろから以下の項目はこまめに観察しましょう。

  • 食事の量

食欲や食事への興味関心の急速な減退や、嘔吐などはないか。

  • 排便や排尿の回数や状態

食事の回数と同数の排便があるか、便秘や下痢を起こしていないか。

  • 歩き方

足腰のふらつき、足を浮かせて歩いていないか、触れると痛みを訴えて鳴いたりしないか。

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まとめ

犬はその習性から痛みを限界まで我慢します。毎日の様子を丁寧に観察し、気になることがあるときは早急に動物病院を受診しましょう。加齢と共に起こる痛みや不調は人間と同じで完全に解消する方法はありませんが、家族が気がついてあげることで緩和方法を見つけるきっかけになります。

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記事執筆&監修:
大谷幸代さん大谷幸代さんドッグトレーナー

大学在学中にイギリスへの短期留学を経験し犬とのライフスタイルを学びペットビジネスの世界へ。20年以上にわたり生体販売、トリマー、トレーナー、店舗開発、成田空港内ペットホテル開業にと従事。現在は3匹の保護犬と1匹の保護猫をパートナーにペット用品の開発、コラム執筆、専門学校講師として活動中。

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