長い期間、同じ原材料のドッグフードを与え続けるとアレルギーを発症する確率が高くなるといわれています。この問題を回避する手法の1つが、フードローテーションです。フードローテーションとは、ドッグフードを特定の製品に限定せず、色々なドッグフードを切り替えながら与えること。特定の栄養素の過剰摂取を防ぎ、アレルギー発症を回避することを目指します。
近年のドッグフードの品質向上や種類の増加は目まぐるしい物があり、それに伴い、与え方や栄養学に関する情報も驚くほど多様化しています。「これまでの与え方が間違っていたのでは?」と不安に駆られている方も多いのではないでしょうか。曖昧な知識のままにドッグフードの切り替えを繰り返してしまうことを防ぐため、この記事ではフードローテーションについて詳しく解説します。
フードローテーションとは?
フードローテーションは、特定のドッグフードを継続して与え続けることを良しとするこれまでの考え方を根底から覆す新しい考え方です。
同じドッグフードを継続して与え続けると、同じ栄養素を過剰摂取することとなり、結果的に体内は特定の栄養素が飽和状態になります。それにもかかわらず継続して摂取を続けると、摂取の限界値を超え、アレルギー症状となって体がSOSを発するというメカニズムが近年、専門家の間で提唱され始めています。
日本では、20年ほど前のペットブームをきっかけに小型犬の飼育頭数が急激に増え、室内飼育や高品質なドッグフードの購入が定着しました。当時のドッグフードは原材料に豚や牛が主に用いられていましたが、犬にも食物アレルギーが起こるという事実が知れ渡ると、アレルギー発症率が低いとされるラムやチキンを主原料とするフードの海外からの輸入が加速しました。人々はこぞってラムやチキンを愛犬に与え、その他の動物性タンパク質を除去したり、特定の製品以外を与えないという手法をとりました。しかし、ラムやチキンの摂取をパピー期からシニア期まで続け、その後生まれた子犬にもその食生活が引き継がれると、これらのたんぱく源にアレルギーを起こす犬が現れはじめました。数世代前からの食生活が影響し、生まれた時点で体内で特定の栄養素の飽和状態が起き、このような結果となったのです。
これまでは、しつけの観点からドッグフードを切り替えるべきではないとされていましたが、犬の健康やアレルギーの発症に注目すると、フードローテーションの必要性も納得できます。
フードローテーションとフードジプシー、何が違う?
フードローテーションとは、ドッグフードを特定の製品に固定せず、あえて色々な種類を混ぜて与えたり、切り替える手法です。多くの家庭では、毎回異なるブランドを選んだり、同じブランドでもこれまでとは別の動物性タンパク質を主原料のフードを選ぶという方法でフードローテーションに取り組んでいるでしょう。
この手法は、フードジプシーと呼ばれる問題とどこが異なるのでしょうか?
フードジプシーとは、犬の偏食や少食の悩みを解消するために短期間でドッグフードの切り替えを繰り返すことです。毎食異なるフードを与え続け、気がつけば市販のドッグフードを全て食べつくしてしまった、もう愛犬が市販のドッグフードを食べてくれない、という出口のない迷路に迷い込んでしまう深刻な状態を指します。
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- 何日ごとにフードを切り替えるべき?
- 主原料をどのように選ぶべき?
- 愛犬が食べなかった場合の対処法は?
- 同じ栄養素はどれぐらいの期間、与え続けてよいのか?
などの疑問に画一的な回答ができるような、明確な基準はフードローテーションにはありません。よって、自分ではフードローテーションに取り組んでいたつもりが、気がつけばフードジプシーになってしまっていた、というパターンもあるかもしれません。
目新しさに引かれこれまでに買ったことの無いフードを選んでみたり、インパクトのある広告をきっかけフードを切り替えるなどの方法で無暗にフードローテーションを続けると、愛犬に過度なストレスを与え、食への不信感を募らせてしまいかねないことを覚えておきましょう。
把握しておこう、メリットとデメリット
日本に限らず、海外でも注目を浴びるフードローテーションにはメリットとデメリットの両方があります。フードローテーションを行うべきかどうかは、愛犬の体調や体質・年齢・現在の食生活と照らし合わせ、考えてみましょう。
メリット
犬は人間よりも嗅覚がすぐれ、味覚も発達しています。毎日・毎食同じ食事を続ければ、飽きがくるのも当然です。
フードローテーションのメリットは、風味・食感・舌触りなどに変化が起き、単調になりがちな毎日の生活に様々な刺激が増え、食の楽しみが増すことです。その上、アレルギー発症リスクを下げる効果を期待できるとなれば、辛い症状を経験せずに過ごせるのですから、十分なメリットがあるといえます。
デメリット
フードローテーションのデメリットとしては、
- 偏食や少食の加速
- 食べなれない食事で消化不良を起こす場合がある
- ドッグフードを切り替えるサイクルが次第に早くなる
などの可能性が挙げられます。フードの切り替えサイクルが加速すると、気がつけばもう新たなフードが見つからない、市販のフードを食べつくしてしまったという結果に陥ることもあります。
犬は、人間と共生し家族同然の生活を送っているといっても、その食性は野生動物のままです。野生動物は主食となる獲物を無暗に変えることはありません。離乳期に親兄弟から分け与えられた獲物を安心、安全な食べ物と理解し、生涯同一の獲物を補食する習性があります。
犬にとって毎日・毎食と食べ物が変わることは、混乱と警戒心を芽生えるきっかけになり、食欲が減退したり、偏食が加速する場合もあります。
家族がフードローテーションのつもりで新しいドッグフードを与えても、愛犬の好みに合わなければ、見向きもされず食べ残すこともあるでしょう。また、「開封したパッケージを食べきったから、次のドッグフードは別のものを!」の思考回路は家族の押しつけです。愛犬からすると、なぜこのタイミングでフードが切り替わったのか理解できないからです。
フードローテーションは愛犬の健康管理の手法の1つとして注目されているにすぎません。全ての犬が必ず行う必要はないということは覚えておきましょう。
手軽に出来るフードローテーションの方法
フードローテーションには様々な方法があります。厳密な軽量やカロリー計算をせず、気軽に取り入れることができる手法からまずは挑戦してみましょう。
たんぱく源のローテーション
犬の必須栄養素である動物性タンパク質の種類をローテーションするという、最も定番のスタイルです。例えば、ビーフを主原料とするドッグフードを与えていた場合、次に購入するドッグフードではチキンを主原料とする製品選ぶ、という方法です。この時、主原料のみに注目して、メーカーを次々と切り替えてしまうと愛犬の食生活が不安定になってしまうので注意しましょう。ドッグフードはメーカーごとに製造方法や原材料、粒の固さや形状が違います。愛犬にとってフードが別メーカーに切り替わるということは、これまでの食事とは全く別のものが目の前に置かれることを意味します。動物性タンパク質のローテーションを行う場合は、同メーカーの製品の中での切り替えがオススメです。
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朝夜別メニューのローテーション
朝はチキンを主原料のドッグフード、夜はビーフを主原料とするドッグフード、というように朝夕でメニューを変える方法もフードローテーションの手法の1つです。
ある日突然、ドッグフードを別銘柄に切り替えるのではなく、1日の中で別フードに切り替える方法なら、愛犬の食欲や好みに合わせて給与量を調整し、偏食を理由に廃棄することも少なく済むでしょう。
フードタイプのローテーション
ドライフードとウエットフードを交互に与えたり、主食となるドライフードにウエットフードをトッピングするなど、異なるタイプのドッグフードを組み合わせることで簡単にフードローテーションができます。チキンを主原料とするドライフードを主食としている場合、トッピングはチキン以外の動物性タンパク質や魚、野菜などがオススメです。
特定の栄養素の過剰摂取にならないよう、様々な栄養素の摂取を心掛けましょう。
季節によるローテーション
夏バテから起こる消化不良や食欲減退が気になる季節は低脂肪のチキンを、冬に向けた体づくりや、換毛が起こる秋冬は栄養価の高いビーフがオススメです。
一般的に動物は、冬の寒さを乗り越えるために秋冬は食事の栄養素の吸収率が高まります。いつもと同じ量のフードを食べていたはずが、なぜか太ってしまったと感じるのはこのためです。
寒い冬が終わり、暖かい春を迎える季節は、余分に蓄えてしまった脂肪をリセットするためにもヘルシーなチキンへ再度ローテーションしましょう。
このように季節や愛犬の体調の変化に合わせて動物性タンパク質を切り替える方法もフードローテーションの方法の1つとして効果的です。
フードローテーションにマニュアルなし!
先ほども解説したように、フードローテーションの手法には厳密な基準やルールはありません。フードジプシーにならないためにも、
- 主食となるドッグフードを決めておく
- ローテーションやトッピングを必須条件と考えず、気軽に取り組む
などの基本ルールは守りつつ、フードを切り替えるタイミングや、一定の動物性タンパク質の摂取期間の判断は愛犬の体調や年齢、体重の増減を見ながら調整してゆきましょう。犬には季節による食欲の変動があります。必ずしも家族の考えや購入のタイミングが愛犬の気分と合致するとは限りません。迷ったときはフードローテーションの基本やその目的に立ち返り、気軽に楽しく毎日の食生活に彩りを与えてゆきましょう。