全身から発するぬいぐるみのような愛らしさ、ポメラニアンは犬界のアイドルそのもの。ふわふわした被毛は綿菓子のようで、真ん丸で潤んだ瞳でじっと見つめられるとつい甘やかしてしまいますね。
幸せいっぱいなポメラニアンとの暮らしですが、「キャンキャン!」と甲高い声で鳴き続ける無駄吠えにお困りの方も多いのではないでしょうか?今回はポメラニアンの無駄吠えの原因と対策について解説します。
天真爛漫でアイドル気質
世界には300を超える純血種が認定されています。犬種は性質や使役、生活圏など様々な項目でグループ分けがされていて、猟犬と呼ばれる区分もその1つです。ペットとして愛されるトイプードルやミニチュアダックスは猟犬に分類、チワワもネズミ捕りや家畜の番をする使役を担っていた歴史があります。この分類上、ポメラニアンは愛玩犬に区分されます。
愛玩犬の特徴
- 扱いやすいサイズと愛らしい外見
- 活発で明るく、社交的
- 遊ぶのが大好き
- 甘えん坊
愛玩犬は”かわいい”ことが絶対条件であり、達成度が高いほど人気犬種となりえます。
ポメラニアンが世界中で愛され、人気犬種上位の座を維持し続けているのは、愛玩犬としての条件を完璧に満たしているからです。
貴族にも愛されたポメラニアンの歴史
日本でポメラニアンがペットとなり、広く飼育されるようになったのは40年ほど前からです。
以前はスピッツが現在のポメラニアンと同じぐらい広く飼育されていましたが、体が大きく甲高い声で鳴くこと、屋外飼育であったことから急速に飼育頭数が減少し、一時は絶滅の心配もされたれたほどです。ポメラニアンはスピッツとは別血統で誕生した犬種ですが、よく似た外見や小柄なサイズが注目を浴び、スピッツと入れ替わるように人気犬種となりました。
ポメラニアンの歴史を更にさかのぼると、16世紀のヨーロッパにたどり着きます。
当時の貴族はポメラニアンやトイプードル、パピヨンといった小さく華やかな外見の犬と共に暮らすことがステータスとされ、様々な絵画にその姿が描かれています。
ドレスをまとった貴族に寄り添うポメラニアンは、豪華な宝石にも引けを取らないほどの存在感を発する存在だったことがうかがえます。
「困った」「どうしよう!」こんな時、ポメラニアンは吠える
長い歴史を通して人間と暮らす術を身に着けているはずのポメラニアンですが、甲高い声でよく吠えてしまうというお悩みの声が多いのも事実です。室内で愛犬と暮らすうえで無駄吠えは家族だけでなく、近隣騒音にもつながり出来る限り早期に解決したい問題です。
一般的に犬は、
- 攻撃や威嚇
- 拒絶の意思表示
- パニック・不安
- 要求
- 甘え
を表現するために吠えます。
人間から見ると無駄に思える鳴き声も犬にとっては意味があり、原因は様々で対策は原因ごとに異なります。
ポメラニアンの無駄吠えで多い原因は、拒絶の意思表示・パニックや不安・要求で攻撃性はありません。ポメラニアンが他犬や他人、物音に吠える原因は自分だけでは解決できない問題に直面したことで起こるパニックや不安がほとんどなのです。
これは人間が「困った」「どうしよう」と戸惑う心境によく似ています。
生粋の愛玩犬であるポメラニアンはこのような場面に直面した時、冷静沈着な態度や行動で対策するという術を持ちあわせておらず、大きな声で鳴いたり、クルクルと回ることで家族の助けを求め、自分が困っていることを周りに知らせます。
このような心境にあるポメラニアンをしつけのためと家族が叱れば、ますますパニックは加速し悪循環に陥るでしょう。
無駄吠え対策に効果的、すぐできる対策
ポメラニアンの声は愛玩犬ならではの甲高く響きやすい声質です。この声質を甘えん坊で可愛いと感じる方もいれば不快に感じる方もいます。ポメラニアンが無駄吠えを始めた時、素早く落ち着かせるために効果的な対策を覚えておきましょう。
散歩中に他犬に無駄吠えをしてしまった時
- 愛犬の名前を呼び、安心させる
- 抱き上げ優しく撫でる
- 愛犬を誘導しその場から立ち去る
- 吠えている対象物を愛犬の視界から外す
- キャリーバッグやカート内に避難させる
- リードを短く持ち、愛犬の行動範囲を狭くする
- オヤツなどで愛犬の注意を相手から反らす
攻撃性の無いポメラニアンが吠える理由は対象物に恐怖を感じているからです。
このような時、それ以上相手との距離が縮まれば恐怖心が高まり、愛犬も鳴きやむどころではありません。静かに動じずにすれ違うなど難易度の高い行動を家族に期待されても愛犬は辛いだけです。
また、家族に叱られたり首輪をキュッと締め付けられたら、ますます追い詰められてしまいます。このような場面では、ぜひ携帯したオヤツを愛犬にみせ、意識を逸らせてあげてください。
関心の対象が他犬からオヤツに移り、気持ちが一転するでしょう。オヤツに関心が無い場合は、抱っこなど愛犬が喜ぶ行動でも十分効果的です。
玄関チャイムなどに反応して吠える時
玄関チャイムはもちろんスマホの着信音、テレビの音、屋外からの騒音などに反応し、愛犬が突発的に吠えてしまうことにお困りの方も多いでしょう。この行動も繊細で攻撃性の無いポメラニアンだからこその条件反射です。
小さな体を守るためには些細な危険も見逃さず、周囲に危険があることを知らせ、一緒に乗り越えようと考えるため無駄吠えをします。
この犬の習性そのものをしつけで改善することはできませんが、鳴き続ける時間を短くするために家族に出来ることはあります。
吠える対象から愛犬を遠ざけること、ハウスなど安全な場所へ愛犬を避難誘導させることを目的に以下の方法を試してみましょう。
- オヤツを小さな容器に入れ、屋内の数か所に常設する
- 愛犬が吠えたり、吠える素振りを見せた瞬間にオヤツの容器を振り、オヤツに関心を集め、呼び寄せてオヤツを与える
愛犬がオヤツに興味がないタイプの場合は、「おいで」「ハウス」「伏せ」など、具体的な行動の指示を出し、愛犬の行動や関心を”吠える”以外にそらしましょう。
これまで紹介した対象法を実施する際は、家族が愛犬に近寄ったり駆け寄ったりすることは決してせず、吠える対象から愛犬を遠ざける事に集中しましょう。
「ダメ」や「うるさい」という言葉は愛犬にとって理解が難しく、場合によっては家族も自分と同じ様にパニックを起こしているのでは?家族が自分の加勢してくれている?と勘違いしてしまいます。
家族がヒートアップすればするほど愛犬の無駄吠えは助長されてしまいますので、冷静に対策することを心がけましょう。
ポメラニアンだからこそ効果的!ハッピーな気分で取り組めるトレーニングを
これまで紹介したように、ポメラニアンの無駄吠え対策には愛犬に駆け寄ったり、厳しい口調で叱る事は必要ありません。生まれもってのアイドル気質、素直で無邪気なポメラニアンに合った、すぐできる対策で十分効果を期待できます。
叱る、厳しく接する、罰を与えるスタイルのしつけではなく、愛犬がポジティブに気持ちを切り替えられる方法で問題解決を目指し、家族もハッピーな気持ちで愛犬に接してゆきましょう。
人間の言葉に反応し瞬時に吠える事をやめる手法は、警察犬や災害救助犬など特殊な使役を担う犬でも難易度が高いとされる技能です。愛玩犬であるポメラニアンが習得するには、家族も相当に厳しい態度と徹底した主従関係を貫き通す覚悟が必要です。
幸せなポメラニアンとの暮らしのためには、その特性を理解したうえで、すぐできる方法での無駄吠え対策がオススメです。