【専門家監修】犬のしつけの基本

しつけ2021年7月29日by 大谷幸代さん

犬と人間が共に暮らすにあたり、愛犬がマナーを身に着ける必要があることは誰もが認識していることですが、”しつけ”や”訓練”と聞くとなんとなくハードルの高さを感じてしまいませんか?

「特別な芸や高度な技能は期待していないから、しつけは不要?」

「オスワリやマテができれば、しつけは完璧?」

この記事では、しつけの開始時期や優先順位を確認しながらその基本をおさらいし、家族と愛犬が安全で快適に暮らすための心構えやステップを解説します。

なぜ、しつけが必要なのか?

犬のしつけと聞くと、真っ先にトイレのしつけを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

家族が決めた場所でトイレを済ませる、トイレ以外では排泄をしないといったマナーは、室内で犬が生活する上で覚えなければならない事です。しかし、しつけは犬がマナーや決まりを覚え、その通りに行動できることだけを目指すものではありません。社会生活を送る上での慣習や言語が異なる犬に、人間社会で快適に暮らすためのマナー全般を教えることなのです。

例えば、

  • 感情のままに吠えてはいけない
  • 周囲に攻撃的な態度や行動をとってはいけない
  • 食べ物の独占や横取りをしてはいけない

ということを教えられずに育った犬が人間社会で暮らそうとすれば、周囲に恐怖や危険を与えることになります。犬が苦手な人や小さな子供は、このような行動を目にしただけで身の危険を感じるでしょう。犬が周囲に恐怖や危険を与えることなく、安全で快適に暮らすためには、共に暮らす家族が人間社会で守るべきマナーを教えながらフォローする必要があります。

しつけには、トレーニングの専門的な知識が必要なのでは?とプレッシャーを感じる方もいるかもしれませんが、あなたのワンコは既に以下のマナーを守って生活を送っていませんか?これは、家族が無意識のうちに愛犬に共に暮らすためのマナーを、しつけの一環として教えた成果といえます。

  • 家族の食べ物を横取りしない
  • 夜中に遠吠えをしない
  • 家具など、インテリアを破壊しない
  • 玄関や窓を自力で開けて脱走しない

相手の感情を読み取り、共感するという共通点をもつ犬と人間。しっかりコミュニケーションを取りながら、お互いが目指すべき姿を思い浮かべ、根気強く取り組むことで必ず成果を実感できます。

一緒に旅行に出掛けたい、休日はワンコと一緒にカフェ巡りをしてみたい、ワンコ友達をたくさん作りたいなど、どんな暮らしをしてゆきたいか、考えるだけでワクワクしますね。

子犬のしつけをする際の心構え

📸:柴犬と交流を楽しむコーギー モカちゃん(@oricorgi_moca)

犬は群れで暮らす習性を持つ動物です。群れにはリーダーとなる屈強な犬も、年を取って体が不自由な犬もいます。気難しい性格の犬や面倒見のいい犬もいます。

色々なタイプの犬と接し、時には厳しく叱られ、食べ物を横取りされながら子犬は社会性を身に着け、群れの中で生活を送るにあたってのマナーを身に着けてゆきます。

子犬を家族に迎えるということは、家族が親犬や群れの仲間の代わりとなり、子犬に人間社会で快適に暮らすためのマナーを教えるということです。

感情的に叱ったり、忙しさを理由に子犬を長時間サークルに入れ生活をさせたり、他犬との触れ合いの機会を作らないことは、子犬の心身の成長に大きな支障をもたらします。しつけは自宅だけ、家族との関係だけで完結できるものではありません。人間社会でいつでも、どこでも犬が安全で快適に過ごすためには、以下のような社会経験が必要です。

  • パピーパーティへの参加
  • ドッグランで遊ぶ
  • 専門家によるしつけ教室での指導
  • トリミングサロンの利用
  • ペットホテルの利用
  • 動物病院の定期的な受診

社交的で人懐こく、攻撃性の低い犬に育てるためにも、積極的に社会との接点を増やしてゆきましょう。

家庭内のマナーを統一しよう

子犬を家族に迎えることが決まったら、まず家族で生活の決まり事を決めてください。

具体的には、

  • サークルの設置場所
  • 出入りOKな部屋、NGな部屋
  • 食事の回数
  • 犬の食器を置く場所
  • 散歩のルート
  • リードを保管する場所
  • コマンドに用いる言葉

などです。家族がワンコに最初に教えるのは、ワンコの名前ですから、これからどんな名前でワンコを呼ぶのかも大切な決まり事です。

以下に記載するような、犬のしつけ・健康に関するお悩みの多くは、家庭内のルールの統一ができていないことに原因があることが多いです。

  • 相手によってワンコの態度が違う
  • 特定の相手にだけ噛みつく、威嚇することがある
  • 特定の相手のコマンド(指示)にしか従わない
  • 特定の家族以外とは散歩をしたがらない
  • ドッグフードの給与量を守っているはずが、なぜか肥満になってしまった

家庭内でルールが統一できていないと、犬は自分に都合の良いルールで暮らそうと考えます。もし家族の誰かに叱られても、別の誰かに甘えることで事態を解決できると知恵を働かせるからです。

例えば「家族の食卓に並ぶ食べ物を無暗におすそ分けしない」という決まり事について考えてみましょう。

もし、家族の誰かがこっそりこの決まり事を破っていたら、ワンコは誰に催促をすれば食べ物をもらうことができるのかを見極め、特定の相手への催促を繰り返すでしょう。次第に催促が激しくなる上、盗み食いや誤飲事故が起きたり、食事量の管理ができず過度な肥満にも陥ることもあります。食べ物を分け与えてくれる相手には服従したり、甘えることもある一方、厳しく接したり、催促を叱責する相手には攻撃的な態度を見せたり、時には完全に無視をすることもあるでしょう。これでは、愛犬の為を思って決めた暮らしの決まり事が台なしになってしまいます。

先延ばしは厳禁!しつけ開始のタイミング

📸:寝る前の歯磨きガム待ちのここちゃん(@komu_koko)

犬のしつけは、一緒に暮らし始めるその日から始めましょう。これは子犬に限らず、成犬も保護犬も同じです。

なぜ初日から始めるべきなのか?

犬を混乱させないためです。しつけは犬が新しい生活に慣れてからと気を遣い、しばらくの間どんな失敗やイタズラも受け入れ、叱らずに過ごすパターンをよく耳にしますが、これは犬にとっての混乱を招きます。

犬が新しい生活に慣れたと家族が判断したタイミングでいざしつけを開始しても、犬は,

「なぜ突然叱られるようになったのか?」

「なぜ今日から?」

「次はいつマナーが変更になるの?」

など、あらゆることを想像して混乱してしまいます。

新しい生活環境に慣れるまでは、と考えた結果の家族の行動が、犬にとっての混乱につながってしまい、新しい生活環境に慣れるどころか振り出しに戻ってしまいます。

一度決めたマナーを無暗に変更しないことが、何より犬のためになるのです。

初日からしつけをするとストレスにならない?

暮らし始めて数日、数週間は犬に余計なストレスを与えないようにと家族は常に心掛けていることでしょう。

犬にとってストレスになるのは、

  • 睡眠を中断する
  • 頻繁に犬を外出させる
  • 来客にお披露目をする
  • 長時間遊ばせ続ける

などであり、生活においてのマナーを教えること自体は大きなストレスにはつながりません。ただし、犬がトイレの場所を覚えるまでは、失敗をしても厳しく叱りすぎないよう、トイレのしつけ用スプレーなどを積極的に活用し、成功したら褒める、失敗した時は無視をするという方法をとりましょう。

トイレの失敗で厳しく叱られると、犬はトイレ自体がいけない行為だと勘違いをしてしまうことがあります。

叱られた原因が排泄行為ではなく、場所を間違えたことだと犬に理解してもらうために、まずは正しい場所でできた時にだけ褒めるという方法を実践してゆきましょう。

しつけの優先順位

犬は学習能力が高く、何歳になっても新たな物事を習得できる動物ですが、だからといって一度にたくさんのしつけを覚えることができるという訳ではありません。

共に暮らす上で身に着けて欲しいしつけに優先順位をつけ、習得度に合わせてステップアップしてゆきましょう。

優先順位は以下の通りです。

1位 トイレ、ハウス

トイレやハウスの場所、就寝場所、夜泣き解消のために、犬の専用エリアを作ります。

<関連記事>専門家に相談! 犬のしつけ・お悩みQ&A「トイレ編」夜泣き解消と、ひとり寝デビューのしつけ法

2位 食事

食器が置かれる場所、食事を待つ姿勢、家族の食べ物を催促しないなど食事全般のマナーを教えます。

3位 甘噛み、無駄吠え

生活全般における禁止事項を教えます。家族内で禁止事項にブレが生じないことが大切です。

<関連記事>【専門家監修】本気噛みになる前に!柴犬の噛み癖対処法よく通る声で吠えるポメラニアン!その対策としつけ

4位 お散歩

散歩前の催促吠え、引っ張り癖、他犬への無駄吠えを予防し、安全な散歩のマナーを教えます。

<関連記事>専門家に相談!ワンコがハッピーになる散歩とは?

5位 お手入れ

ブラッシング、歯磨き、爪切り、シャンプーなど生涯続くお手入れを経験させ、過度な抵抗や攻撃をしてはいけないことを教えます。

手遅れになる前に!しつけにおける3つのNG行為

まだ体が小さく、力も弱い子犬なら小さな子供でも簡単にコントロールすることができます。

多少乱暴に扱っても、子犬はその状況を受け入れ、無抵抗でいることもあるでしょうが、それが本心とは限りません。

  • 長時間叱り続ける
  • 目をじっと見つめ、萎縮させる
  • 仰向けに寝かせ、体を拘束すること

しつけを行う上でのこのような行為は、子犬に過度な恐怖心や対抗心を植え付ける原因になります。成長し、自我が芽生え始めると、幼犬期に受けた行為がトラウマとなり家族との関係性にゆがみが生じかねません。一度崩れた信頼関係の修復は、ほぼ不可能です。犬のしつけを行う時は、お互いが対等で良好な関係でいることを常に心掛けましょう。

記事執筆&監修:
大谷幸代さんドッグトレーナー

大学在学中にイギリスへの短期留学を経験し犬とのライフスタイルを学びペットビジネスの世界へ。20年以上にわたり生体販売、トリマー、トレーナー、店舗開発、成田空港内ペットホテル開業にと従事。現在は3匹の保護犬と1匹の保護猫をパートナーにペット用品の開発、コラム執筆、専門学校講師として活動中。

WANTIMES は、愛犬の健康を第一に考えた 国産ドッグフードブランド「レオ&レア」が お送りしています。

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